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「小説」
Innocence world

9話 ~Behind the scenes story~

今回からしばらく、サブキャラである“刈谷慎吾”君のお話ですね。
彼は基本ひねた性格なので、今までの聯君の語りより少し、読みづらいかもしれませんが、それが彼の魅力(?)です。

しばらくの間、慎吾君にお付き合いください。
あと、付属で相馬君もちらほら現れますので、軽くあしらってあげてくださいw


では、追記からどうぞ


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15時55分。
現在、俺は学校の図書館に居る。
まだ春先なために、窓から差し込む陽光は、仄かな温かみを含み足元を照らしていた。その温かさがちょうどいいのか、本を読みながらうつらうつらとしている者や、本来の目的を放棄して目を閉じている者もいる。
俺自信、何度か襲いくる睡魔と欠伸を噛み殺し、目の前の活字に目を走らせていた。今日中に、読みたい本があったからだ。
相馬に言わせれば、ここで借りるか、書店で買えばいいとのことだが、借りるのは俺のポリシーに反するし、予め読む機会があるのなら、読んでから買うかは決めたい。
かく言う相馬だが、今は俺の隣で惰眠を貪っている。むにゃむにゃ、などとテンプレのような寝言を呟きながら、口の端に涎を垂らしている。暇だなんだと文句を言いつつも、ここに付いてきているのは、聯が見当たらないからだろう。
あいつ―――もとい聯は、昨日は学校を休み、今日は来ていたが、どこか落ち着かない様子だった。体調が悪いのかは定かではないが、放課後もすぐに姿を消してしまっていた。
まぁ、相馬のほうは、付いてくるのは問題ではないし、寝ているのなら五月蝿くなくて済む。静かな図書室で読書というのは俺にとって安息のひとときなのだから。今日も今日とて、俺はそんな時間を過ごしている。実に有意義である。
だが、そんな安らぎの空間に、異質にして場違いなモノが入り込んできた。
図書室の扉が勢いよく開けられ、大きな音を立てた。部屋に居るほとんどの生徒、また司書の教師が何事かと入り口に視線を向ける。俺はもちろん、無視だ。隣の相馬は、よほど深い眠りだったのか、まだ寝ぼけ眼で状況を理解できていない様子だ。
図書室に入ってきたのは、明らかに場違いな空気を纏った女子生徒だ。胸にあるバッジの形から見ると、彼女が2年生であることが知れた。彼女は突き刺さる無数の視線も気にせず、すたすたと室内を進んでいく。
もちろん、俺は関係がないので、本から視線を外すことはない。
足音は一定のリズムを刻みながら大きくなっていく。そして、足音が目の前で止まる。俺の目の前でだ。

「ねぇ、興味でた?」

「いえ、まったく」

溌剌としたこの声音で問いかけられる質問に対して、今の今まで同じ返答をしてきた。この不毛な問答は既に17回もされている。ちなみに今回で18回目だ。

「山上2年生、少し場所を変えませんか?」

「えっ、なに、ついにやる気になったの!?」

「…はぁ……いいから」

俺は彼女を連れて図書室を離れる。ついに俺の聖域サンクチュアリをも侵されてしまったわけだ。既に、教室など主要な場所は侵略済みというのは言うまでもない。さて、今後どうしたものか…。
俺は、近くの廊下で立ち止まり、向き直る。彼女が先ほどから、熱く何かを語っているようだが、そんなことはどうでもいい。俺はただ―――

「俺に構わないでください」

「いいや、構うよ。私の眼は、刈谷君が確実に武道の申し子であると見極めているからね」

どこからその自信がくるのか。それに、人のことを考えない不躾な態度。どこまでも真っ直ぐで自分を疑わない。俺とは真逆の人間のようだ。水と油とまではいかずとも、本と相馬ぐらいは相容れないだろうな。まったく、理解に苦しむ。

先週、町の図書館での一件以来、俺はこの先輩に付きまとわれている。それは、聯と相馬、二人と別れたあとのことだった――――――。



今の時刻は、15時28分。
予想以上に、早く解散となってしまった。まさか、あそこまで相馬の面白いところを見れるとは、今後もこういった機会は持ってみたいものだ。それにしても、聯のほうも気になったな。初めて会うにしては、天城2年生とよく話していたし、もう一人の2年生も、妙に引っかかることを言っていた。…まぁ、聯が女子絡みでどうというのは、今に始まったことではないか。それに気づいていないのは、相馬と当の本人ぐらいだろうしな。
さて、今からどうしたものか。

今から家に帰るにしては、少し時間がある。

「少し遠いが、足を伸ばして隣町の本屋にでも向かうか」

歩いていると、ほどよい陽気が体を包むのを感じた。時期はまだ春先だが、雲がほとんどなく、快晴のため、肌寒さも感じなかった。散歩でもしたくなるような日とは、正にこういった日を指すのだろうな。だがまぁ、インドアである俺にはまったく合わない考えだ。

暫く歩いていると、どこからか聞こえてくる。
後方から、誰かが走ってくる足音が聞こえてくる。
天気がいいのだから、ランナーの1人や2人、いてもおかしくはないろうが、俺はその足音から一切の注意を逸らさなかった。
音が大きくなっていく。
軽快なリズムのテンポが、少し落ち着いた時、俺はすっとその場を開けた。

「うわっ!」

俺の斜め前を、前傾姿勢のまま、突っ伏しそうになる女性がいた。彼女は勢いのまま、1メートルばかしオーバーランしたが、すぐに体勢を立て直し、こちらに向き直った。

「ちょ、なんで避けるの!? てか、どうしてわかったのよ?」

半ば息を切らしながら、一方的に疑問符を投げつけてきた。

「この辺りは割りとよく通ってますからね。この時間帯にほとんどランナーはいませんし、何よりテンポが速すぎる。全力疾走に近いのなら、それはランナーじゃない」

「じゃあ、なんで避けたの?」

「確かに、俺を抜いて走ろうとする人がいて、俺が変に動くとぶつかってしまうかもしれないが、俺に近づくにつれ速度を落としてきたから、俺に用のある人だと思ったわけです」

「危険だから速度を落としたっていう可能性は?」

「そう考えるなら、そもそもこの道の、今歩いている右側に歩道はない。歩道すらない場所を走ること自体、危険と言えば危険ですから。まぁ、ないとは思いますが、ひったくりなどを警戒していただけなんですけどね」

「なるほどぉ、君、賢いね」

「どうも。それで、山上2年生は俺に何のご用で?」

「おっ、覚えてくれてたんだ。ちなみに君の名前は?」

あまり人を覚えるほうでないのだが、それでも随分とキャラが強かったので覚えていた。

「…刈谷です。再度、お聞きしますが、何の用ですか?」

我ながら大人気なく語気を強めてしまった。今日会ったとも言えぬ他人と、長話をしていられるほど、俺は社交的じゃない。

「あぁ、ごめんごめん。引き止めちゃったね。それじゃ、早速本題だ。刈谷君ってさぁ、もしかして、なにか格闘技とかしてない?」

「まったく」

「ほんとに?」

「えぇ、それこそさっきの俺じゃありませんが、そう思う根拠は?」

「勘、ね」

相当なドヤ顔である。

「…なるほど、わかりました。残念ながら、俺は格闘技に興味はありませんので、それでは」

俺がその場を足早に去ろうとすると、肩を掴まれた。

「ならさ、ちょっとやってみようよ。実はあたしの家って、隣町で空手の道場をしてるんだ。だから、一度来てみてよ。なんなら、交通費ぐらいはもつからさ。最初はそりゃ地味だけど、すぐに強くなるよ、刈谷君なら。そしたら、絶対楽しくなるからさ」

「お言葉ですが、迷惑です。俺は興味もやる気もありません。そもそも経験のない俺を、そこまでしてやらせようとするのはどうしてですか?」

辛辣ともとれる俺の言葉に、さすがの彼女も怯むと思った。女子は強い言葉をぶつければ、さっさと離れていくものだと思っていたからだ。しかし、予想に反し、眼の前の女子はケロッとした表情でいた。そして、なんらトーンの変化もなく、言葉を投げ返してきた。

「だから、さっきも言ったでしょ。勘だって。あたしは刈谷君には格闘技の才能があると思ってる。いや、確信してると言っても過言じゃないくらい。そりゃあ、多少は強引だとは思うけど…」

一応、自覚はしているのか…。

「それでも、ここで引き下がったら、絶対後悔すると思うから」

「俺が?」

「あたしも」

「随分と大袈裟なことを言っていますが、その言葉はもっと違うシチュエーションで使ってください」

「今がその時だと思ってる」

どうやら、頑として引く気はないらしい。心が強いとか、強がっているからとか、そういうのではないらしい。根本的な―――本質的な部分で、今までに出会ってきた異性とは違うようだ。そして、俺とも…。

「とりあえず、検討はしておきましょう。俺もこんなところで承諾できるほど考えなしではないので」

「それはもちろん。ちゃんと考えた上で、答を出してもらって構わない。私もそれのほうが気が楽だから。強引に引き込んじゃ、互いにぎくしゃくしちゃうだろうし」

数分前までの言葉や言動を忘れたかのような口ぶりだった。それはいいとして、俺は軽く会釈し、その場を後にした。逃げ帰るように―――そして、今である。



「とにかく、俺は今忙しいので」

「忙しいって…本、読んでるだけじゃん」

読んでいる、だけ…だと。

「それに、刈谷君いっつもどっかに行くしさ。探す身にもなってほしいんだよね」

随分な言い草をしてくれるじゃないか。俺がことあるごとに居場所を変えているのは、そもそも読書の邪魔をされたくないからだ。

「ねぇ、格闘技に限らず、体を動かすことは楽しいよ?」

そんなことは…言われなくてもわかっている。

「とにかく一度、うちの道場に―――「もういい!俺は格闘技に興味もないしやる気もない。わかったら、これ以上付きまとうのはやめてくれ。目障りなんだよ。俺はもう……」

俺は、相手が年上だということも忘れて、声を荒げてしまった。いくら本のことを言われたとはいえ、言葉の残弾が尽きた時、後悔した。さすがの彼女も、表情を強張らせ、唇も動きを止めていた。

「くっ……失礼、します」

俺はそう言い、その場を離れた。年上ということを加味してのその言葉も、誰でなく俺自信に対しての強がりだった。



「おっす。やっぱここに居たか…って、何、あからさまに嫌な顔してんだよ。あれか、至福の時間である読書中に声をかけたことか。それとも、自分だけの空間に入り込んだことか。それとも…本を読むことそのものを否定されたことか?」

「何の用だ、相馬」

「台詞が疑問系じゃないぞ、そりゃ威嚇だ、慎吾。そもそも、親友が親友に会うのに、いちいち理由がなくちゃいけないのかよ」

突然現れた相馬は、いつにも増して口が回っていた。そして、いつもと違い、それは空回りしていなかった。
そんな現在、俺と相馬は屋上にいる。俺は読書……いや、俺はただここに居た。
時刻は、4時30分を回ったところ。

「かの―――山上2年生と話したのか」

「また疑問系じゃないのな。あの後、図書室でお前を待ってたら、山上先輩が来てよ。『刈谷君って、ホントに格闘技に興味がないのかな?』とか『本のことを言ったら、怒らせちゃったみたいなんだけど』とか、いろいろと聞かれたよ」

「それで、お前はなんて答えたんだ?」

「やっと、疑問系か。いやまぁ、別に…普通に答えた。『さぁ、俺ぁ慎吾の友達ですが、野郎のプロフィールなんざ興味ないですから(笑)』ってな」

「そうか…普通にか」

「あぁ、これが普通だろ?」

こいつが、相馬が単純に馬鹿で、どうしようもない奴だったら、俺はつるんではいないだろうな。ギシギシに錆付いた歯車に油を差すように、こいつは人の心に入ってきやがる。ズカズカと平然にじゃない、いつの間にか自然と入ってきやがる。そして、用を終えると消える。都合がいいと言えば、それまでだろうが、俺には、そしてあいつにも、それが楽なのだろうな。相馬自信が、どのように感じているかは知らないが。
それでも、わるくない。

「相馬」

「ん?」

「待たせて悪かったな」

「なんだよ、急に気色悪い」

「その謝罪も兼ねて、今度、何かおごってやる」

「マジか!?やったね。慎吾のことだから、また小難しい本でも読まされるのかと思ったぜ」

「ん?なんだ、そっちのほうがいいのなら―「いやいや、いいって」

「それならいいのだが…」

「そんじゃさ。今週の日曜にでもどっか食いに行こうぜ」

「構わない。それなら、隣町のショッピングモールに行かないか?」

「なんでまた、男同士でそんなとこ」

「本屋がリニューアルオープンしたらしい。そのついでに何かおごってやる」

「なんだか、メインディッシュが変わったような…。まぁいいか。それより、さっさと帰ろうぜ」

「…そうだな」

胸の罪悪感が少しだけ、和らいだ気がした。





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