Day of beginning change

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
FC2 Blog Ranking
*Edit TB(-) | CO(-) 

ねこぶっ!!

《第柒話 逆転勝利と思わぬ右ストレートと》 2




Back                                        Next



 僕は部室に備え付けの着替えコーナー(ただボロカーテンが部屋の一角に付いているだけ)にて制服に着替える。それと同時に忍先輩は手当てをしていた。
 着替えが終わり、忍先輩の前に座る。
「一体、あれはなんだったんでしょう?」
「さあな。よいではないか、我々は勝ったのだから。これで依頼の彼女にも面目が立つというものだ」
「まぁ、そうですけど……」
うん、そうしよう。忍先輩がそう言うのなら、これ以上の詮索はよそう。
「よし…私のほうは終わったが、空真、怪我などはないか?」
「えぇ、忍先輩の活躍のおかげさまであまり、怪我という怪我はないですね」
 ほとんどしてない。しいて言うなら、ネコミミ男のエルボーが頭頂部にクリーンヒットしたのが痛かった。あの威力は身長に響くんじゃないかと思う……なんだか、いろいろ心配だ。それだけに身体的ダメージより、精神的ダメージのほうが大きい気がする。
「そうか、それはなによりだ。すまないが、私は保健室に道具を戻してくる」
「いいですって、そんなの僕が行きますよ。忍先輩は怪我もしてるんですから」
「私のほうが多く手当てをしたのだ。それならば、私が片付けるのは普通なのではないか? 空真は少し休んでいろ。お前は運動が苦手なのだろう? ならば、今回は相当こたえたはずだ。違うか?」
「まあ、そうですけど……」
 運動が苦手とかいう部分を指摘されると、どうも反論しにくくなる。僕が黙り込んだのを見計らってか、最初から自分で行くつもりだったからなのか、僕の返答を待たずに忍先輩は部室を出て行ってしまった。
「ふぁ~……ふむ」
 一段落して一気に眠りが襲ってきた。くそっ、体は素直だ。一秒ごとに眠たさが増していく。まだだ、まだ忍先輩が戻ってきてない…もど…き…。
 イスに座ったままだというのに、そこで僕の意識はブラックアウトしてしまった。
 ―――これは夢なのか? そうに違いない。だって、めっさ猫が居るもん。それはもうもっさりと。そんな中に僕は居る。ここまでうじゃうじゃしていると、逆に怖いなぁ。みんなこっち見てるし。そうこう観察していると、銀白色の毛並みの猫が一匹、目の前にチョコンと座った。
「―――――」
 口を開けて鳴く素振りを見せるが、鳴き声は聞こえない。ん? というか、この猫。なんか、この目つきとか、どっかで……。すると、その猫は急に僕に飛び掛ってきた。
「うわっ!」
 目が覚めた。
「なっ!」
「えっ?」
 …………そして、めちゃくちゃ近くで声がした。
 …………しかも、顔のすぐ横で。
 …………やっぱり、振り向いてみる?
 …………さぁ、振り向いちゃいなよ。
 …………OK。
 …………心の中で深呼吸。いざ。
 …………忍先輩?
 …………だよね?
 …………というか、近いです。
 …………とりあえず。
「忍先輩、一体どうしたんですか? そんなに顔を近づけて」
 バッと、一瞬にして飛び退く忍先輩。
「―――っ! なっなんでもない。おっお前が寝てしまっているから、ホントに寝てしまっているのか確認しようとしただけだ。だっ断じて、やましい心があったわけではない。第一、寝ていて無防備なお前が悪いのだ!」
「理不尽な。そんなことより……」
「そんなことより、なんだ?」
「…無防備って、何かしようとしてたんですか?」
「うっうるさい。馬鹿者、そんなことはどうでもよいから、早く帰るぞ」
「?」
 気になる。でも、なんだか寝惚けてて、どうも頭が働かない。ううむ、これは如何に。
 時刻は午前三時過ぎ。そんな特定の人種(良くも悪くも)しか活動していないような、月だけが我が物顔をしている夜半時。無機質な街路灯の光が照らしている道を、僕と忍先輩は並んで歩く。あれから忍先輩はずっと顔を背けたままだ。身長差が身長差なだけに、忍先輩の顔はほとんど見えない。僕は僕で寝惚けて、どうもうまく思考が働かずにいた。
「………」
「………」
 ううむ。いくら寝惚けているとはいえ、さすがに無言は息苦しい。かといって、さっきのネタを掘り起こすほ ど、僕は空気が読めないわけじゃない。そうすると、話題は限られてくるわけだ。
「そういえば、優勝賞品ってなんでしょうね?」
「さあな。我々がもらうわけではない。依頼主に渡すことになっているだろ」
「そうでしたね…」
 早速、一つ目の話題は消え。次は……。
「それにしても疲れましたね」
「あぁ」
「………」
 ダメだ。僕はやっぱりバカなのか? 今日はいい天気ですねレベルじゃないか。
「えぇーっと、その……」
 結局、黙り込む。しかも、目前に迫るはマイホーム。何か、何か言わなくちゃ、そう思っても言葉が出ない。というより、さっきの出来事が気にかかり、うまく頭が回らないのだ。どうしたものか、そう考えているうち、遂に 着いてしまった玄関先の門。
「えぇっとその…おやすみなさい。それじゃあ、また明日…」
 僕がわずか三段しかない階段の二段目に足を掛けたときだった。
 不意に。
「空真」
「えっ?」
 忍先輩の呼びかけと同時に、振り向く。
 それと同時に左肩にそっと手が添えられえる。
 それと同時に鼻先を細やかで艶やかな黒髪と、それから漂う仄かにいい香りが通り過ぎる。
 それと同時に頬にやわらかいかんしょくががががが!!??
 えっ?
 えっ!
 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??
「なっな…っな、えっ」
 熱を帯びた頬を押さえる。
「これは今日、がんばった褒美だ。分かっていると思うが、それ以外の何物でもないぞ。そこは重々承知しておけ。それでは、私は失礼する。それじゃあ、また明日(あす)。おやすみ、空真」
 一気に眠気爽快。体の芯を電流が流れた。いや、電流なんて比じゃねえ。体の中でビッグバン三回ぐらい起きた感じだ。これぞ、小宇宙誕生の瞬間。しかも、三つ子とは中々中々。
 僕に背を向けて歩き出す忍先輩。歩きから早歩きへ、早歩きから小走りへ、曲がる角の手前ではすでに全力疾走に近かった。焦っているかのように駆けていった忍先輩の後姿には、いつもの威厳やらかっこよさがなかったように思えた。どことなく、声が上擦ってたよな気がするなー……あはははは。
 僕は完全に思考が停止していた。傾きかけた満月が僕を見ている。僕も傾きかけた満月を見ていた。
 やぁ、満月。さっきの見てただろ。あれって、やっぱりアレだよな。間違いなくアレだよね。
 なぁ、満月。おまえが太陽みたいに僕たちをちゃんと照らしてたら、忍先輩はどんな表情をしてたか分かったのにな。いや、やはりいつものようにキリッと引き締まった表情だったのかもね。でも、もしかしたら………万が一にだけども、こんなのはどうだろうか。頬を赤らめ、恥ずかしさからもじもじと指を絡ませ、クールな雰囲気からかわいらしい面持ちになっている忍先輩……まっ、全部僕のしがない妄想ですよ。ホント、さすがにそこまでないか。ありえないよね?
 それでさぁ、満月。僕、どうしよう。
 いつのまにか、夢現な内に僕は玄関先で、満月にさよならの挨拶をして、太陽とおはようの挨拶をしてしまっていた。いつまでも熱を帯びた頬には手が添えられていた。

Back                                        Next


FC2 Blog Ranking
*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


Back      Next


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。