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ねこぶっ!!

《第陸話 忍先輩流逆転術と何かを間違えた僕と》




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あぁ~どこで間違えたんだ。冷静になれば、無理に決まってる。
「空真、なかなかいいじゃないか。今日の為に、生徒会に無理を言って部費を前借した甲斐があったというものだ」
今更、言えない。やりたくない、なんて。
「ついでに、これを付けておけ」
 そう言って、忍先輩は香水のようなものを吹きかけてきた。
「なんですか、香水か何かですか?」
「ん? あぁこれはな、マタタビエキスだ」
「は? マタタビ…エキス?」
「そうだ」
「なぜ、そんなものを…」
「雰囲気というかな、空真も知っての通り、この成分を嗅いだ猫科の動物は、ライオンだろうとなんだろうと、人間でいう酔ったような状態になるのだ」
「いやまぁ、それぐらいなら知っていますが、それと、僕に吹きかける理由が繋がらないのですが…」
「あぁ…その、なんだ。今の空真はその人より猫に近いわけだから酔うのではないかと、一抹の希望にかけてみたのだが……あまり意味がなさそうだな」
「あたりまえですよ! そもそも、酔ったらどうしようもないでしょうが!」
「いや、それはそれで需要があるというものだ」
「何を豪語してるんですか、まったくもう…」
後戻りできそうにない。先輩はどうして、こんなにやる気なんだ? まさか、マジで同士を見つけたとでも思っているのだろうか。う~む、ありえそうで怖い。
忍んでいた倉庫裏から抜け出し、グラウンドへと向かう。一旦、近くの草陰へと身を潜める。そこにはちょうど、体育館から這い出てきた例の男が……って、月光に照らされ僕にも見えてしまった。その男の頭部に、あたかもずっとそこに居たかのように鎮座しているネコミミが。
マジか~。何でネコミミなんか付けてんだ、あの人。まあ、髪色と同じ銀色で揃えられているし、似合っているには似合ってるんだが……どうも、僕の目が悪いのだろうかどう見ても、あのヒョロヒョロしてんのは尻尾っだよ
な…。うん、世の中にはいろんな趣味趣向を持った人が居るんだ。他人がそれにとやかく言うのもアレだろう。現在、僕の隣にも変わった趣味趣向の人がいることだし、不思議ではないな。
 それにしても、あの男が片手にむんずと?んでいるのは高志だよな。どうやら、ホントにペアのようだが、片方がダウンしてるのに失格じゃないのだろうか。いや、何度考えても同じだろう。ただでさえ、無理を道理で引っ込めているような現状況。あの、生徒会長が面白そうなことを、わざわざ自分から摘み取るはずもない。それならば、行く先楽しみな芽は、温かく見まもっているだろう、今もどこかで。
「空真、いい加減にそれを取れ」
「まっ待ってください。僕にも心の準備というものが」
「着ている時点でそんなことを言える状況ではない。さっさと、その布を取るのだ」
「うっ…確かに一理ある」
 しかたなく、全身を覆い隠していた旧校舎にて調達したカーテンを脱ぐ。
 あくまで忍先輩の好きな黒色を基調としたゴスロリタイプのフリル付ドレス。それに加え、いつも以上に短いスカート。少しでも激しく動こうものなら、一発でアウトな丈だ。“中”がどうなっているかは、僕の成長の兆しが現れていないことを遥かに凌駕し、最も保守しなければいけない最高にして最強のトップシークレットだ。ドレスに見合った、これまたフリルが付いたニーソックス。今回はそれらに合わせられた靴も用意されていた。なんと周到な。そして、それに見合う黒色のネコミミ。これも又、いつもよりどことなく高そうである。恐ろしいほどの完成度に、装着している最中、何度か軽く意識がダイブしそうになった。自分の精神が、人のそれを超越した瞬間を垣間見た気がする。
「せっ先輩、これはヤバ過ぎですって。いくらなんでも、これはちょっと…」
ああ、死にたい。これほどとは。
「うむ、申し分ないほどの完成度だ。今度の撮影はこれに決定だな」
「忍先輩、今はそんなことはいいですから」
「そんなこととはどういうことだ、空真?」
「そんなとこに反応しないでくださいっ」
「まあよい。空真、私が先に行ってくる。私が合図を送るまでは隠れていろ」
「りょっ了解」
 そう返答すると、先輩は颯爽と男の元へと駆けていった。相も変わらず、かっこよすぎっすよ、忍先輩。男が先輩の存在に気づいた瞬間……
 宙を舞うは高志。
 地を蹴るはネコミミ男。
 身構えるは忍先輩。
 文字通り一触即発。というか、無触即発? 
 どうやら、ネコミミ男は交渉の間もくれなかったらしい。
 うわっ……高志、モロに落ちたよ。そんなことより、忍先輩!
 素人目ということと、暗く視界が良好ではないため、二人の細かな動きは完璧に把握できない。けれど、ある程度の流れはわかる。忍先輩が敵わないと発言していたのを危惧していたが、ある程度両者の実力は拮抗しているに見えた。
 ネコミミ男は飄々とした動きで、主に突きやら蹴りを主軸としている。思うに酔拳のそれに近い感じだ。それに対して、忍先輩のほうはそれらの攻撃をはじいたり、軌道を逸らせたりした後に、合気道の小手投げのようなものや、柔道の足払いといった、体勢を崩すものを多用している。
 ネコミミ男の、顔への突きを片手で逸らし、逸らした腕を取り、足を弾く。ネコミミ男は宙を舞うが、体を反転させ危なげなく着地する。最早、この一連の流れだけでもほんの数秒のやり取り。こういった動作が、次から次へと繰り広げられている。
「僕はどうすれば……」
 体勢を低くした忍先輩が回し蹴りの要領で足を払いにいく。それを飛び上がり避けるネコミミ男。その勢いに身を任せ、くるりと前宙からの踵落とし。正に軽業。すぐさま体勢を立て直した忍先輩は上体を反らし、それを払い落とす。
「あっ!」
 しかし、次の瞬間には忍先輩の体は吹き飛んでいた。踵落としは回避したものの、器用を通り越し、人間の動きを超えたそれ。空中で体勢を入れ替え、残った足が先輩の腹部を捉えていた。ネコミミ男は獣の如き四つん這いで着地。その後、すくっと立ち上がった。
 いつのまにか、僕は走り出していた。それと同時に、何かが切れる音を聞いた気がした。今までに聞いたことが無いくらい大きい音だった。黒くて白いモノが心を埋め尽くした。
「空真、何を……」
 息を吸い込み。
「てめえの相手は“オレ”だっ!!!」
「くっ……ばっ…空真。何故、出てきた。今すぐ逃げろ」
 吹き飛んだ先輩の姿を見て、どうしようもなく腹が立った。威嚇じゃない、これが素なのだ。自分でも抑えきれないほどの感情が、心を、体を、脳を、魂を震わせた。つい、自分の格好がゴスロリということも忘れて。
「オマエ……ナンダ…ソノ姿ハ…ニオ…ドウシテ…」
「?」
 ネコミミ男は急に戦意を失ったかのように、立ち尽くした。
「―――っ、忍先輩。大丈夫ですか?」
「あぁ、なんとかな。それより、あれはどうしたのだ?」
「それが、まったく。急に意味の分からないことを言い出したと思ったら、あんな感じに…!」
 まっまさか…忍先輩の推測。ネコミミ男は同志だったのか!? それなら納得はいく。僕的には納得はいかないが、この格好に何かを感じたのなら……それはそれで嫌だな。
「空真、これはうまくいったようだな」
「はあ…よくはわかりませんが、相手が戦意を失ったことだけは分かりま……!!」
 そこでやっと、ネコミミ男は口を開いた。と、同時にキタァ!!
 空気を震わし響く咆哮。耳を劈く怒号。それは、人のなせるものかと疑いたくなるほどの大音量。
「クッ……ガァァァァァァァァァァァ!!!」
 なんか、めっちゃ怒ってる? 一体、なんだよっ!?
 咄嗟に忍先輩の前に立ち塞がる。でも、どうしても怖くて目を閉じてしまう自分が居た。ああ、ホントに情けない。いいぜ、やってやるよ。来るなら来い、このやろう。
 数秒が経つ……………ん? そっと、目を開ける。そこには呆然とフリーズしているネコミミ男と、いつぞやに遊びに来ていた……黒猫?

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