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ねこぶっ!!

《第参話 黒猫とパンドラと》 3




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 僕の淹れたお茶を啜る忍先輩。
 いつもの長机を部屋の中央に戻し、先輩と恐らく一年生であろう女の子が向かい合おうように席についている。 ちなみに例の危険コスプレグッズは部屋の隅へと大移動。その後に、布で見えぬように隠しておいた。薄汚れた布ごしに、妙なプレッシャーを感じる…。
視線を机の二人へと戻す。忍先輩は幾分か興奮は収まったものの、止めが入ったことによりやり場のない感情が暗転したのか、全体的にネガティブになりつつあった。結果、珍しく来たお客さんだというのに覇気をほとんど発していない。片や来訪者の彼女は、きょろきょろと何やら落ち着かない様子で、忙(せわ)しなくもぞもぞしている。まあ、無理はないだろう。妙なテンションの美人の先輩(危険度B)に廃校舎(危険度A)、そして一番に怪しげな現場を目撃(危険度S)。これらが揃えば、並大抵の奴は混乱、又はUターンでバックホームぐらいはするんじゃないだろうか。僕なら前者の後に、後者だろうな。
 僕の淹れたお茶を、冷めた頃合に忍先輩が再度啜った。
「ふう…それで、君は我が猫部に何用なのかな? クラブの助っ人なら生徒会を通してくれないといけないんだが」
 やはり、語気もそこはかとなく弱弱しい。
「あの…生徒会にはちょっと……」
「それはどういうことかね?」
「その“サバイバルゲーム”って知ってますか?」
「ああ、知っている。学園非公認非認識の行事のことだろ?」
 僕も知っている。ちょうど、この前に高志から聞いたところで、それなりに由緒ある(?)桜坂学園の数少ない暗黒面(ダークサイド)だとか。毎年、不定期に開催されるゲームで内容は毎回変わるらしく、ある時はスポーツだったり、ある時はクイズ大会だったりと、とりあえず勝負のつくもので競うというものらしい。そのゲームの一番の醍醐味が、賞品らしいのだが、何でも高級な“何か”がもらえるらしい。勿論、優勝者のみ。それの所為か、毎年結構な人数が参加するらしい。
「ええ、そうです。それに参加して勝ってもらいたくて…その」
「それが君の依頼? 別にサバゲーは生徒会主催だから、これも一応は助っ人として扱うのだが…まあ、よいか。他人の内情に首を突っ込むというのも野暮だろう」
 そうなのである。このサバゲーは歴代の生徒会が主催している。いつ、どうしてこんなものができたのかは定かじゃないらしいが、一つだけ分かっているのは、現会長こと姫之先輩は気前がいい。それの所為なのか、去年の賞品は高級焼肉セット(肉抜き)だったという。肉抜きの辺りが高級なのか疑わしいが、なんでも十数万はしたらしい。どっから資金を調達しているのやら。いろいろと黒い噂も飛び交っている辺りを考えると、あまり深く関わらないほうが得策なのだろう。それにしても、付随した情報で姫之先輩が一年の時から生徒会長を務めていることのほうが驚きだった。
「ありがとうございます。それで、そのサバイバルゲームに私は出られないんです。理由はちょっと……」
「ふむ。しかしながら、我が猫部としても忙しい身だ。日々のクラブ活動に余念がないからな」
 基本的には、僕らは何もしてない。活動と言っても、定期報告でアレを行う以外は、ただ駄弁っていることがほとんど。そして現在、忍先輩の表情が怪しくなり始めた。どのようにかは言えない。というか表現しがたい。こういう時は大概が突拍子もないことを言い出すか…しでかすかのどちらかだ。どちらにせよ、例えるならギャルゲーでいうヤンデレルートへと突入した模様。一歩、ほんのちょっとでも間違えればヤバイことになるんDEATH!!
「それでだが、生徒会を通さないで且つ君については何も詮索を入れないという条件で、私たちは依頼を受諾しよう。それの代わりに、君にも一つ我々の要求を呑んでもらいたい」
 一つ訂正を入れておくが、我々という点については勝手に忍先輩が要求しているだけであって、決して僕は賛同してないし、ましてやそんな話を聞かされていない。
「な、なんでしょうか?」
 絶対危険である。これは言うまでなく、僕が長年の間に培ってきたなんとやらが訴えてくる。僕の理性が告げる。目の前で狼に襲われる羊を助けろと。しかし、僕の本能が告げる。お前も、食われるぞ、と。なので、僕は見守ることにした。
「我が猫部で暫くの間だけでも、モデル(・・・)をしてくれないか?」
 やはり、そうか…。
「モデルって?」
「いや、なに、ただこちらが用意する服装になってもらって撮影会を行う程度だ。規模もたかが知れる程度だよ。その写真などを、どうにかするというのは一切無いから安心してもらって構わない。なんならネガなどは目の前で処分もする。プライバシーの問題については徹底させてもらう」
「そっ、そうですか…そういうのなら…はい、たぶん大丈夫です」
 たぶんですが、それは大丈夫じゃないと思います。というか、そういうのならって…どういうのならダメだったのだろうか。どこまでの覚悟でここに乗り込んできたのか、僕には計り知れない。きっと、最初のあの光景を目にしても帰らないほどの覚悟があったのだろう。今となって思えば相当の覚悟だ。
 まあ、アレだ。部長の意向には逆らえないのが、僕、平部員の性だ。たとえ、目の前で犠牲になる人が居たとしても、ここは大人しく黙っておこう。決して僕は、二人なら役回りも半分になるだろうから楽、などという邪(よこしま)な考えは微塵もない。
 ホントですよ? 
「それで、今回の参加条件が二人一組というものなんですけど…」
「参加条件も分かっているのか…だが、大丈夫だ。まったくもって問題はない、任せてくれ。幸運にも我が部は二名居るからな」
「ほんとうですか? ありがとうございます」 
 最終的にはテンションが上がりつつあった忍先輩。そりゃまあ、新しいモデルは見つかって、しかも結構かわいいコなら尚のことだろう。そして、最後までか細い声で話していた彼女。不運ながら我が部には二名しか(・・)居ません。この言葉が意味することは一つ。
 詰まるところ、僕も強制参加。
 へこむ僕に先輩が諭すように話しかけてきた。
「空真よ。パンドラの箱を知っているか? パンドラという女性が神にもらい開けるなと言われた箱を開けてしまった。それの所為で、世の中に災厄がふりまかれた。しかし、パンドラの箱の中には希望も入っていたという伝承だ。要するに、何事も嫌なことだけではないということだ。そう、肩を落とすでない」
「…せんぱ~い。それ、めちゃくちゃ不幸の割合が高いですよぉ」
 妙な追撃がとどめの一撃と化し、僕の心中はすでに死刑執行を待つ準備を始めていた。

 
 黒い彼女は少しやつれ気味になりながらも、策を成功させた。
「ふぅ~…さて、私はこれで待つだけ」
 しかし、黒い彼女は気づいていなかった。少しほど前に、銀髪の男がふらりと出歩いていることに。
 どちらにせよ、気づいたところで黒い彼女はどうにかしようなどとは毛頭思わないだろう。
「…オレガ、手ニ入レテヤル…オマエノ…為ニ…」
 そう、銀髪の男は呟いた。
「それにしても、寿命が縮むかと思った……よく分からないけど苦手なのよね。あの雰囲気」
 そう、黒い彼女は呟き、器用に首を掻いた。


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